2026年の通常国会に提出される予定だった労働基準法改正案が、今回見送られました。 「結局、改正はなかったのか」と感じた経営者や人事担当者の方も多いかもしれません。しかし私は、この見送りを「何も変わらなかった出来事」と捉えるべきではないと考えています。
今回の改正案が注目された理由は、単なるルール変更ではなく、企業と働く人の関係そのものを見直す内容が含まれていたからです。労働時間管理や労使協定の在り方を通じて、「労使はどう向き合うべきか」という本質的な問いが投げかけられていました。
■ 改正案の見送りは「現状維持」の合図ではない
法案が見送られたからといって、国の問題意識が消えたわけではありません。むしろ、企業側が自主的にどう対応するのかが、より強く問われる段階に入ったとも言えます。 これからは「法律が変わったから対応する」のではなく、「変わる前から、どうあるべきかを考える企業」が評価される時代です。
■ 過半数代表者の選出は、パートナーシップの第一歩
私が特にお伝えしたいのが、過半数代表者の選出方法です。 中小企業では今も、「誰かに頼まれて36協定にサインした」というケースが少なくありません。しかし、この“なんとなく”の選出こそが、労使関係の弱さを象徴しています。
過半数代表者をきちんと選ぶということは、単なる手続きではありません。 社員の声をどう集め、どう反映させるのか。そこに、企業の姿勢が表れます。選出プロセスが整えば、「この働き方には納得できない」「ここは改善したい」といった声が出てくることもあるでしょう。
しかし、それは決してマイナスではありません。 社員と率直に話し合い、一緒に職場をつくっていく、その関係性こそが、パートナーシップの出発点だと私は思います。
■ 「労使対等」から「共につくる関係」へ
これまでの労務管理は、「管理する・管理される」という構図になりがちでした。 時間をどう縛るか、ルールをどう守らせるか。確かに必要な視点ですが、それだけでは人は力を発揮できません。
これから求められるのは、社員を管理対象として見るのではなく、同じ方向を向く仲間として捉える姿勢です。 安心して働ける環境を整え、健康的に力を発揮できる職場を、企業と社員が一緒につくっていく。そこにこそ、これからの労務管理の価値があります。
■ 2026年以降、「選ばれる企業」はここが違う
働き方の透明性が高まり、情報は簡単に外へ伝わる時代です。 企業が社員とどう向き合っているかは、採用や定着、ひいては企業の存続そのものに直結します。
法改正の有無にかかわらず、 「私たちは、社員と一緒に職場をつくる会社です」 このメッセージを明確に示せる企業こそが、これから選ばれていくと私は考えています。
労働基準法改正案の見送りは、ゴールではありません。 むしろ、企業が自ら一歩踏み出すための“静かな合図”です。 いまこそ、労使関係を「管理」から「パートナーシップ」へと進める好機であると私は思います。
